幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「……時間がないから、単刀直入に言う」


あたしのすぐそばに寄り添った総司の吐息が、耳にかかる。


「落ち着いたら、俺の妻になってくれ」


低く囁いた言葉の意味を飲み込まないうちに、いたずらのように耳たぶに口づけられた。


肩に置かれた大きな手が、一瞬だけ頬をなでて離れていく。


「では、御免」


総司はあたしの返事を聞く前に、廊下を走り去っていってしまった。


あとには、全身が燃えるように熱くなってしまったあたしだけが残された。


そっか、武士が嫁をもらうには、主君の許可が必要だもんね。


総司の主君は上様でも会津候でもなくて、近藤局長ってわけだ。


だから、局長に大事な話があるって……。


「って、えええええええっ!?」


今のって、正式な求婚だったのか?


「ちょっと待って総司っ!総司ってば!」


そうして泣きながら彼の姿を探したのだけど、照れ屋な総司は結局あたしの前に姿を現すことなく……

そのまま新撰組は、九条河原に出陣してしまったのであった。


そ……そんなのアリ?