「……時間がないから、単刀直入に言う」
あたしのすぐそばに寄り添った総司の吐息が、耳にかかる。
「落ち着いたら、俺の妻になってくれ」
低く囁いた言葉の意味を飲み込まないうちに、いたずらのように耳たぶに口づけられた。
肩に置かれた大きな手が、一瞬だけ頬をなでて離れていく。
「では、御免」
総司はあたしの返事を聞く前に、廊下を走り去っていってしまった。
あとには、全身が燃えるように熱くなってしまったあたしだけが残された。
そっか、武士が嫁をもらうには、主君の許可が必要だもんね。
総司の主君は上様でも会津候でもなくて、近藤局長ってわけだ。
だから、局長に大事な話があるって……。
「って、えええええええっ!?」
今のって、正式な求婚だったのか?
「ちょっと待って総司っ!総司ってば!」
そうして泣きながら彼の姿を探したのだけど、照れ屋な総司は結局あたしの前に姿を現すことなく……
そのまま新撰組は、九条河原に出陣してしまったのであった。
そ……そんなのアリ?



