不穏な空気を察知したのか、すぐそばにいた山南先生が伊東さんの肩をたたいた。


「伊東さん、彼女は女性です。離してあげてください」

「え……?」


女性と聞いて、伊東さんの目が丸くなった。


山南先生は周りに聞こえないよう、小さな声で話す。


「彼女は監察方隊士です。

そして総司の妻になる予定の女性なので、下手をすると彼に斬られてしまいますよ」


つ、妻って……!


かああと頬を上気させたあたしを見て、伊東さんは名残惜しそうに手を離した。


「なんだ、女性……しかも沖田くんのお手つきなのか。

どうりで華奢だと思いましたよ。

それにしても可愛いなあ……」


じっとりとあたしを見つめる伊東さんの後ろで、とうとう総司が刀の鍔を押したのが見えた。


ちゃき、と小さな音に反応し、伊東さんがそちらを振り向いた。


「心配しないでください。

拙者はどちらかというと、キミの方が好みだから」


そう言われた途端、ぞわっと鳥肌を立てた総司から力が抜けていった。


伊東さん、恐るべし……!