小さな音を立てて離れていった総司は、そんなことを言う。
仕方ないじゃない。
あんたのことを想うと愛しくて切なくて、自然に涙がでてきちゃうんだもん。
「……取り込み中、申し訳ないが」
「わああっ!」
突然すっとふすまが開いて出てきたのは、斉藤先生だった。
彼は涼しい顔で、真っ赤なあたしたちを見つめる。
「一番隊隊長、隊士が探していたぞ。
別れが名残惜しいのはわかるが、さっさと準備を終わらせてくれ」
そうだった。今は、隊士全員出陣の準備で大忙しだったんだった。
斉藤先生自身も忙しいみたいで、予備の刀を何本も抱え、廊下を走っていった。
「すまん。すぐに行く」
逢引きの場面を見られて気まずかったのか、総司はさっとあたしから離れ、刀を腰に差して部屋の外へ出ていく。
「あ……総司!」
「ん?」
「そういえば昨日、局長の前で話そうとした大事な話って何?」
「ああ……」
総司は思い出したように天を仰ぐ。
その横を、平隊士が防具を持って走り去っていった。



