「それでこそお前だよ」


総司はぽんぽんと、大きな手であたしの頭を軽くたたく。


今は息遣いが聞こえるほど、近くにいる。


けれど、総司は武士だ。


いつ、こんなふうに突然、戦にに出動しなければならないかわからない。


「……武運を祈ってるよ。

お願いだから、絶対に無事で帰ってきてね」


体のことだって、どうなっているのか本当のところは誰にもわからない。


とりあえず池田屋以降は幹部が交代で見張ってくれたらしいけど、狼化することはなかったという。


元気になったならなったで、結局捕り物や戦に参加しなきゃいけないし……あたしの心配は尽きることがないんだろうな。


武士なんかに惚れちゃったのが悪いんだけどさ。


「可愛いこと言うようになったじゃねえか。
九条河原なんて、すぐそこだろ」


総司はふっと笑ったかと思うと、そっとあたしに口づける。


あたしはいつの間にか、総司の口づけの前触れを察知できるようになっていて、自然にまぶたが閉じられるくらいに成長していた。


「お前みたいな泣き虫を置いて、死ねるかよ」