「……ごめんなさい、家柄も見た目もぱっとしなくて……」


「違う、楓くん、そんなことを言っているんじゃないんだよ。

さっきの君のセリフが心に沁みてだなあ……」


懐紙を差し出すと、局長は涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をぬぐった。


「総司、お前は果報者だなあ。
こんなにいい子に惚れられて……」


おおげさだよ、局長。


結局あたしの事情で、正式な夫婦になれないんだし……。


罪悪感が胸にのしかかろうとしたとき、総司があたしの頭をぽんとたたいた。


「……はい。
俺は日本一の果報者です」


え……。


嘘かと思った。冗談かとも。


でも、総司が局長に嘘を言うわけない。


そっと見上げた総司は、こっちを見て微笑んでいた。