「どうした?」

「会津藩邸より、使者が参っております」

「うむ」


どうやら急な呼び出しがかかったらしく、局長は緊張した顔で身なりを整えだす。


「すまんな、総司。
帰ってきたら、ゆっくり聞くから」


そう言い残し、局長は慌ただしく部屋を出て行ってしまった。


「……忙しくなるな」


土方副長が、局長の背中を見送りながら楽しそうに言う。


「とっくに長州軍はこっちに向かってきてんだろ。

俺たちに声をかけるのが遅すぎるぜ」


「楽しそうですね……副長」


池田屋で多くの人材を失った長州が、新撰組を預かっている会津藩に激昂しているとは聞いていた。


とりわけ、京都守護職・会津候松平容保様を憎む長州の急進派は、既に京に向かってきているみたい。


せっかく池田屋で倒幕派の企みを阻止して、この街を守れたと思ったのに、結局戦火に巻き込まれてしまうのか……。


やるせない思いがよぎり、ため息が出てしまう。


「しんきくせえ顔してんじゃねえよ、小娘。

手柄を立てる機会を逃して悔しいのはわかるがな」


……全然、わかってない。


池田屋からますます、副長の鬼度が増している気がした。