本気で怖がる楓の反応に、笑いがこみ上げる。


ああ、なんだって戦の前だっていうのに……こいつといると、心が休まるんだろう。


ふと自分の腕に楓の髪の感触を感じ、笑うのをやめる。


楓は自分の頭を、俺にもたれかけさせて、言った。


「……あたしも、いつかその家族のなかに入れるかな……」


そういえば、こいつは両親を失っていたんだっけ。


俺よりももっと、孤独だったはずだ。


きゅっと胸がしめつけられるようで、俺はそれをごまかすように、片手で楓の髪をなでる。


「……もう、家族みたいなもんだろ。

お前がこの前の話を受けてくれるんなら……正式に、俺たちは家族になれる」


出陣前のことを思い出したのか、寄り添う楓の体温が少し上昇したような気がする。


……とは言ってみたものの、断られたらどうしよう。急に不安になった。


「や、あのさ、この戦が終ってからゆっくり考えてもらえればかまわねえから!」


「総司……」


「生き残らなきゃ話にならないもんな、ははは……」


苦し紛れに笑う俺の腕に自分の腕をからませ、楓はぎゅっと力を込めた。