幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「狼化しちゃったの!?」


狼は人間に返事なんかしない。

ただ「ぐるる」と、低く喉を鳴らす。


「なんと……沖田君、きみもでしたか」


伊東が驚いたように目を見開いた。


人狼の姿になった総司は、あたしから視線を離す。


そして敵だけを見つめて地を蹴ると、わき目もふらずにそちらへ駆けていく。


まるで、一陣の風。


「総司!」


総司はあっという間に、伊東の間合いに入り込む。


「がううっ!」


不器用に刀の柄を握ったままの総司は、それを力任せに突き出す。


いつもの流麗なそれとは違う粗暴な剣は、伊東の腹の鱗を砕き、貫いた。


「ぎゃああぁぁぁっ」


高く耳障りな悲鳴が響く。


どてばたとのたうち回る尻尾を踏みつけて跳んだ総司は、伊東の肩をつかみ、その首筋に鋭い牙を突き立てた。