幕末オオカミ 第二部 京都血風編



隣を歩くのは、たしか伊東派の鈴木三樹三郎さんだ。


伊東さんの実弟だけど、伊東さんは婿に入っているため、苗字が違う。


「だから、狙われていると教えて差し上げたのに」


二人は歩きながら、小さな声で話している。


あたしはこそこそと、その後ろを話が聞こえる程度の距離をとってついていくことにした。


狙われていると教えてあげたって?


「しかし、一度会っただけであれだけ無防備になるとは……坂本も大したことありませんでしたね。

まさか忠告しておいた本人が、命を狙いに来るとは思わなかったんでしょうが」


三樹三郎さんがぽろりと口を滑らせる。


「口を閉じろ。誰が聞いているかわからんぞ」


伊東さんは聞いたこともない厳しい口調で三樹三郎さんをたしなめる。


どうやら、実弟には容赦ないみたい。


って……ちょっと待ってよ。


今の三樹三郎さんの言葉って、そのまま素直に介錯すると……。


伊東さんたちは、事件の前に坂本に会い、「命を狙われていますよ」と忠告した。


そして、再度会ったときの坂本は、一度会っていることもあり、無防備だった。


そのときに……忠告した本人が、坂本の命を……。