「まあ、これは新撰組の密偵がすぐに知らせてくれたおかげで、やつらも断念したようだがな」
「なあんだ、よかった」
「良いわけない。やつらがいつまた武力蜂起するかわからんのだぞ」
上様の厳しい声に、総司はこくりとうなずく。
「たしかに……世情は、ますますご公儀にとって厳しいものになりつつありますね」
「で、あろう?そこで、腕の立つ沖田と、薬の血を持つ楓に、余の傍に来てほしいと思ったのだ」
なるほど。
今上様が暗殺されたり、病気になったりしたら、討幕派は一斉に武力蜂起するに違いない。
けど、新撰組を抜けてというのは……。
「楓を余の側室にしようなど、そんなことは考えていない。ただ、二人一緒に余の傍に来てほしいのだ」
「ありがたいお申し出ですが……」
総司は渋い顔をした。
そりゃそうだよね。総司が新撰組を捨てて行けるわけがない。
「局長を差し置いて、俺が上様の元へなど行けません」
ほらね。幕臣になったとはいえ、総司の主君は上様じゃなくて局長なんだから。



