「少し息抜きもしたくて城から抜け出てきたが……世の中はやはり物騒だな」
「えっ、もしかして内緒で脱走してきちゃったんですか?」
「お前と一緒にするな」
上様は眉をひそめ、あたしをにらんだ。
「銀月がそばにいてくれるから平気だ」
「そういえば」
名前を呼ばれた銀月さんが、何もない空間から姿を現す。
その姿は、以前見た巨大な狼ではなく、普通の大きさの狼だった。しっぽが二股に別れているのは相変わらずだけど。
「臭いですぐにわかった。お前がいてくれて助かった」
総司が言うと、銀月さんが喉を鳴らす。
『頭領、お元気そうで何よりです。
以前に報告いたしましたとおり、先代将軍がお隠れになったあとも、我らの幕府との同盟は続いております』
そうだったんだ。
総司はあたしにもののけの話はほとんどしないけど、時々銀月さんから報告を受けていたんだろう。
「今日は、お前たちに話があってな……」
上様はそう言うと、静かに息を吸った。
「新撰組を抜けて、余の元に来ぬか?」
「「はっ??」」
あたしと総司は打ち合わせもしていないのに、声をそろえてしまった。



