幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「かーえでっ!」


いつも通りの、明るい声。


「平助くん……」


「あはは、もしかして浮気現場かと思ってついてきちゃったんだけど、やっぱり違ったね」


木の影から顔を出した平助くんの髪が、朝日に好けて茶色に光る。


どうやら、今の斉藤先生とあたしの会話を、全部聞いていたみたい。


けれど、平助くんは前と変わらずににこにこと笑っていた。


「きっと一もさ、楓に追及されたら辛いなと思って、避けてたんだよ。
なんだかんだ、可愛がってたからさ」


春の香りがする土を踏みながら、こちらに近づいてくる平助くん。


「ってことは、平助くんもあたしを避けてたんだね」


「うん。可愛い楓に追及されたら、決心が鈍っちゃいそうだもん」


「もう、ふざけるな!」


こんなときに冗談言わないで。


軽くたたいてやろうとした手は簡単にかわされ、代わりにぎゅっと握られてしまう。


反射的に手を引こうとすると、平助くんの優しくてきれいな両手に、そっと優しく包みこまれた。