「かーえでっ!」
いつも通りの、明るい声。
「平助くん……」
「あはは、もしかして浮気現場かと思ってついてきちゃったんだけど、やっぱり違ったね」
木の影から顔を出した平助くんの髪が、朝日に好けて茶色に光る。
どうやら、今の斉藤先生とあたしの会話を、全部聞いていたみたい。
けれど、平助くんは前と変わらずににこにこと笑っていた。
「きっと一もさ、楓に追及されたら辛いなと思って、避けてたんだよ。
なんだかんだ、可愛がってたからさ」
春の香りがする土を踏みながら、こちらに近づいてくる平助くん。
「ってことは、平助くんもあたしを避けてたんだね」
「うん。可愛い楓に追及されたら、決心が鈍っちゃいそうだもん」
「もう、ふざけるな!」
こんなときに冗談言わないで。
軽くたたいてやろうとした手は簡単にかわされ、代わりにぎゅっと握られてしまう。
反射的に手を引こうとすると、平助くんの優しくてきれいな両手に、そっと優しく包みこまれた。



