「あんたはどうなの?あの人狼とは……まだみたいじゃない」
じろじろと全身を見回され、居心地が悪くなる。
「あ、あたしは仕事があるから、赤子なんて……」
っていうか、祝言すら挙げてないし。
家茂公が亡くなって、さらに延期になりそうだし……。
「ま、どうでもいいや、あんたのことなんて。じゃあね」
槐は今度こそ、去っていこうとする。
「あ、槐……」
「何よ。もう行くわよ」
つんとした顔で振り返る槐が、不思議と可愛く見えた。
「ねえ、いつかまた会える?」
聞くと、槐は驚いたような顔をした。
「……さあね」
そう言い、槐はすたすたと歩いていってしまった。
「………元気でね!」
きっと槐には、今のあたしには想像もつかない生活が待っているんだろう。
どうか、彼女と彼女の家族が、ずっと幸せでありますように。
ねえ、陽炎。
あんたもきっと、そう望んでいるでしょ?
これからも、槐を見守ってあげてね。
あたしは願うように、冬の空を見上げた。
自分の吐いた白い息が、冷たい空気に溶けて消えていった。



