幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「あんたはどうなの?あの人狼とは……まだみたいじゃない」


じろじろと全身を見回され、居心地が悪くなる。


「あ、あたしは仕事があるから、赤子なんて……」


っていうか、祝言すら挙げてないし。


家茂公が亡くなって、さらに延期になりそうだし……。


「ま、どうでもいいや、あんたのことなんて。じゃあね」


槐は今度こそ、去っていこうとする。


「あ、槐……」


「何よ。もう行くわよ」


つんとした顔で振り返る槐が、不思議と可愛く見えた。


「ねえ、いつかまた会える?」


聞くと、槐は驚いたような顔をした。


「……さあね」


そう言い、槐はすたすたと歩いていってしまった。


「………元気でね!」


きっと槐には、今のあたしには想像もつかない生活が待っているんだろう。


どうか、彼女と彼女の家族が、ずっと幸せでありますように。


ねえ、陽炎。


あんたもきっと、そう望んでいるでしょ?


これからも、槐を見守ってあげてね。


あたしは願うように、冬の空を見上げた。


自分の吐いた白い息が、冷たい空気に溶けて消えていった。