『いいか宗次郎』
土方さんはひざまづき、まっすぐに俺の目を見て言った。
『黒船のことを知ってるな。
この国はそのうち、異国との戦に巻き込まれる。
そのときのために、今から腕を磨いておくんだ』
くろふね……?
そういえば、異人さんの船が浦賀に来て大騒ぎになったとか、なんとか。
詳しく聞こうとしても、みんな「子供には難しいよ」といって相手にしてくれなかったのに。
土方さんは、小さな子供だった俺にも真剣に、話をしてくれた。
『剣は、人を傷つけるだけの道具じゃねえ。
そうだとしたら、お前の大好きな勝っちゃんが、そんなもん人に教えるわけねえだろ?』
『はい……』
『剣は、自分の大事なものを守るためにあるんだ。
よく覚えておけ』
そういうと土方さんは立ち上がって面をつけ、竹刀を握った。
『見てろ、宗次郎』
『トシ、宗次郎にムリをさせない方が……』
近藤先生が心配そうに、見学している俺の方を見つめる。
『もちろんだ。宗次郎、ムリだったら出ていっていいからな。
武士の子が敵前逃亡したって、全然恥ずかしくねえんだから。
そう、ぜーんぜん、まったく、恥ずかしくねえぞ~』
土方さんは、俺を見てにやりと意地悪く笑った。



