幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「そうか。山崎にも頼んではいるが、これからますます注意してくれ」


「と、言いますと?」


「あいつは、もともと尊王派だろう。

家茂公が亡くなり、禁門の変でろくな采配がふれなかった豚一公が将軍になり、長州征伐は失敗……幕府の屋台骨が揺らいでいる今、隊士たちの動揺を誘うような真似は阻止しなければならない」


豚一公っていうのは、今まで一般的じゃなかった豚の肉を喜んで食べたという噂からつけられた、慶喜公のひどいあだ名。


それはともかく、副長の言う通り、伊東参謀はもともと、幕府より天子様を尊ぶ、尊王攘夷思想の持主だ。


佐幕攘夷派の近藤局長とは、『攘夷』という点で合意し、新撰組に加入した。


けれどすでに幕府は、銀月さんが言っていた通り、攘夷をする意思がないみたい。


というか、したくてもできるだけの力がないんだ。


いつまでも攘夷に乗り出さないばかりか、何か月も将軍が決まらなかったり……正直、隊士たちの間にも『幕府、このままで大丈夫なのか?』と現状を憂える声がちらほら聞こえる。


参謀が加入するときに副長が心配していたとおり、新撰組の乗っ取りをするなら、今が一番良い時機だろう。