「ちょっと待て!いいのかよ、そんな地味で小さいもので」
「ん?うん。だって他のモノは、普段使えないもん。
これなら、いつでも懐に忍ばせておけるじゃん?」
見上げた総司は、なんだか腑に落ちないような、微妙な顔をしていた。
「もっと女っぽいものでもいいのに……まあいいか、お前がそれでいいなら」
総司はぶつぶつ言いながら、財布を取りだす。
あたしは娘さんたちの好奇の視線に耐えられなくなって、そっとその場を離れて、近くにあった橋の上に移動した。
ぼおっと川の流れを眺めていると、総司が櫛を持ってやってきた。
「ほら」
ぶっきらぼうに渡されたそれを、両手で受け取る。
うわあ……初めて、総司に食べ物以外のものをもらった……。
「嬉しい。ありがとう」
すごく照れ臭かったけど、勇気を出して、顔を見てお礼を言う。
すると、総司はふっと微笑んだ。
「おう、大事にしろよ」
大きな手で、くしゃ、と頭を撫でられた。
そのまま橋の欄干にもたれた総司が、静かに話しだす。



