幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「ちょっと待て!いいのかよ、そんな地味で小さいもので」


「ん?うん。だって他のモノは、普段使えないもん。

これなら、いつでも懐に忍ばせておけるじゃん?」


見上げた総司は、なんだか腑に落ちないような、微妙な顔をしていた。


「もっと女っぽいものでもいいのに……まあいいか、お前がそれでいいなら」


総司はぶつぶつ言いながら、財布を取りだす。


あたしは娘さんたちの好奇の視線に耐えられなくなって、そっとその場を離れて、近くにあった橋の上に移動した。


ぼおっと川の流れを眺めていると、総司が櫛を持ってやってきた。


「ほら」


ぶっきらぼうに渡されたそれを、両手で受け取る。


うわあ……初めて、総司に食べ物以外のものをもらった……。


「嬉しい。ありがとう」


すごく照れ臭かったけど、勇気を出して、顔を見てお礼を言う。


すると、総司はふっと微笑んだ。


「おう、大事にしろよ」


大きな手で、くしゃ、と頭を撫でられた。


そのまま橋の欄干にもたれた総司が、静かに話しだす。