幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「そうして迷った時に必ず、山南の声が聞こえるんだ。

もう戦いからは手を引け……って」


そうなんだ……。


きっと、山南先生の最後の想いが、ちゃんと槐に届いていたんだ。


「そういうわけで、あたしは手を引く。

あんたと会うのも、ここに来るのも、これきりだ」


「そう……一族からも抜けるの?大丈夫?」


「あんたに心配されるほど、落ちぶれちゃいないよ」


槐はそう言うと、そっけなく背を向ける。


すると、近くの茂みから音もなく、一人の男が姿を現す。


たしか、槐の仲間の小次郎だ。


初めて日の光の下で見た、髪を短く切ったその顔は、前に会った時よりも少し男らしくなったように見えた。


ずんずん茂みの奥に消えていく槐。


彼女の代わりに小次郎はぺこりと頭を下げた。


そして、槐を追いかけて彼も消えていく。


「……あいつ、なんだかほっとしたような顔をしてたな」


二人の姿が見えなくなったとき、総司がつぶやいた。


「きっと、小次郎はずっと槐を見守ってきたんだね……」


島原で遊女の真似事をして、人を傷つけるためにもののけを操って……槐がそんな生活から抜け出すことを決めてくれて、良かったと思っているんだろう。


「きっと、山南さんも同じような気分なんだろうな」


総司に肩を叩かれ、そっと山南先生の墓石に向かう。


そこには、小さく可愛らしい山の花々が、供えられていた。