「……総司!!」


その胸に飛び込むと、総司は両腕であたしをぎゅっと抱きしめてくれる。


「楓……ごめんな。遅くなって」


低い声が耳元で聞こえると、涙がぽろぽろと溢れだした。


「ああ、しかし……妻にするには身分の問題があるか」


上様がぽつりとつぶやく。


そうだった。


ひとつ問題は解決したけど、まだあたしと総司の間には壁があったんだった……。


しかし、上様があっさりと次のひとことを口にした。


「松本、楓をお前の養女にしてやれ」


「へっ?う、上様、なにを?」


「苗字帯刀を許されたお前の身分なら、その養女が武士の妻になるのに不都合はないはずだよな?」


突然の事態に目を白黒させる松本さんをよそに、上様は淡々と話を進めていく。


ちょ、ちょっと待って。


あたしが、松本さんの養女になるってこと?


「紙の上のことだけだ。誰でもやっているだろう。

余が許すから、あとは頼んだ」


そう言って、上様はあたしを見て笑った。