「あれは……!」
一橋公の質問に答えることができないでいると、突然局長が東大手門の方を指さした。
すると、門の向こう側から大小さまざまな影が飛んで、こちらに近づいてきていた。
目の前を疾走していくそれらは、灰色の毛並をしている。
「お、狼!?」
一橋公が叫ぶ。
「まさか……」
狼たちは、上様のいる黒書院へと駆けていく。
「将軍が危ない!」
一橋公は慌てた様子で、黒書院の方へと走り出す。
あたしと局長も顔を見合わせると、その後に続いた。
「ああ近藤殿、ちょうど良かった!」
黒書院の前に着くと、ちょうど松本さんが飛び出してきた。
「部屋の中に……どこから入ったのか、もののけがうようよと湧いて……」
「もののけが?」
「入ってください」
本来なら、局長は将軍にお目見えできる身分じゃない。
けれど緊急事態だということで、局長はあたしや一橋公と共に部屋の中に入ることが許された。



