きっといつか、立派な武士に……。
『別に、なりたくないんだけどなあ……』
ミツ姉さんも、自分が立派な武士になることを望んでいるみたいだった。
だから試衛館なら、所作や作法も身につけられると思ったんだろう。
『はあ……』
とぼとぼと厠に向かって歩いていると、玄関から物音がした。
『誰ですか?』
門人が訪ねてくることはしょっちゅうなので、俺は恐れずに顔を出した。
夕暮れの茜の空気に染まるそこに立っていたのは……。
薬箱を抱えた、ものすごい美丈夫だった。
まるで、役者絵から抜け出したみたいな。
目がぱっちりとしていて、肌の色が白くて、髪は漆みたいで……まるで女の人みたいだった。
『く、薬屋さん……?』
『俺は土方歳三ってもんだ。
勝ちゃんはいるか?』
勝ちゃんって、きっと勝太さんのことだ。
こくりとうなずいた俺は、近藤先生のところへその薬屋を案内した。
『トシ!』
『おう勝ちゃん。飯時にわりいな』
『いいんだよ、トシさん。
さあ、座った座った』



