幕末オオカミ 第二部 京都血風編



きっといつか、立派な武士に……。


『別に、なりたくないんだけどなあ……』


ミツ姉さんも、自分が立派な武士になることを望んでいるみたいだった。


だから試衛館なら、所作や作法も身につけられると思ったんだろう。


『はあ……』


とぼとぼと厠に向かって歩いていると、玄関から物音がした。


『誰ですか?』


門人が訪ねてくることはしょっちゅうなので、俺は恐れずに顔を出した。


夕暮れの茜の空気に染まるそこに立っていたのは……。


薬箱を抱えた、ものすごい美丈夫だった。


まるで、役者絵から抜け出したみたいな。


目がぱっちりとしていて、肌の色が白くて、髪は漆みたいで……まるで女の人みたいだった。


『く、薬屋さん……?』


『俺は土方歳三ってもんだ。
勝ちゃんはいるか?』


勝ちゃんって、きっと勝太さんのことだ。


こくりとうなずいた俺は、近藤先生のところへその薬屋を案内した。


『トシ!』


『おう勝ちゃん。飯時にわりいな』


『いいんだよ、トシさん。
さあ、座った座った』