「屯所から連れて行かれたってことは、楓が新撰組にいたことがばれてたってことだ。

おそらく、岡崎のくのいちが噛んでるんだろう」


俺の脳裏に、槐の顔がぼんやりと浮かぶ。


山南さんが切腹する間際、あの女はたしかに揺れているように見えた。


恋していた陽炎のことで新撰組を恨んでいるとはいえ、山南さんの最後の言葉の通り、戦いから身を引くことを期待していたのだが……甘かったようだ。


「おそらく、楓はまだ生きているだろう。

あいつが処刑されるなら、俺たちも無事では済まないはずだ。

おそらく近藤さんは、俺たちの暴動を防ぐための人質として、城内に留められているんだろう」


「そっか……って、安心してる場合じゃ全然ないよね」


俺の着物から手を離した平助が、自分の赤毛をくしゃりと掻く。


「敵が上様じゃ、さすがの俺もどうしようもねえ」


土方さんは眉間にシワを寄せ、背後にそびえたつ二条城を見上げる。


そして、ゆっくりと俺に視線をうつした。


「……総司よ、そろそろ教えてもらえねえか。

上様が、楓にそれほど固執する理由を」


「それは……!」


「その理由がなきゃ、二年も言葉すら交わさずに放っておいた女を、今更取り戻そうとするはずねえだろ」


斉藤と平助がハッとしたように、こちらを見つめる。


そのとき、遠くの門の方から人が走ってきた。