なのに、素直にうなずけなくて、唇が震えた。


うんと言えば、もう二度と総司やみんなに会えない……。


「それほどの生きがいを、新撰組に見つけたということか?」


返事をしないあたしに、上様が優しい声音で聞いた。


「まさか、上様の側室という身でありながら、新撰組の中に男ができたんじゃなかろうな」


一橋公の鋭い追及に、体がびくりと震える。


「いいえ……いいえ!」


総司のことがばれたら、彼は不義密通の罪で斬首にされてしまうだろう。


激しく首を横に振ると、一橋公が何か怒鳴ろうと大きく息を吸う音が聞こえた。


しかし、それを上様が手を上げて止める。


「……とにかく、今日の話はこれで終わりにしよう。

楓、申し訳ないが明日はもう少し量をもらうかもしれない」


量を……とは、血のことだろう。


「余は黒書院で休むこととする。ここはお前に貸してやる。

松本、楓に食事と着替えを。

布団も用意してやるように」


「御意」


「慶喜、お前がそんなに怖い顔でにらむから、楓が震えているじゃないか。

一緒に来い」


そう言われた一橋公は、舌打ちをひとつして、上様のあとに続いて部屋を出て行く。


最後に松本さんが、軽く礼をしてふすまを閉めた。