「幕府のお役人が来ています。
あなたに、二条城に同行願いたいと……」
二条城に……。
それを聞いた途端、自分の足元に穴が空いて、奈落の底に吸い込まれるような感覚に襲われた。
幕府の役人が、新撰組の隊士名簿にも乗っていないあたしを、名指しで呼び出すということは……。
『元側室の楓』が、新撰組にいると、幕府の役人にすでにばれているということだ。
「……そう、ですか。
わかりました。すぐに行きます」
槐と出会ってから、いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていた。
彼女は新撰組の崩壊を望んでいる。
もしかすると彼女が、戦闘じゃ新撰組に敵わなさそうだと思い、幕府に情報を流したのかもしれない。
そうすると、あたしを匿っていたことで、新撰組のみんなが、処断されてしまう。
このまま逃げ回るわけにはいかない。
どうにかして上様と直接話して、新撰組を取り潰されたりしないように、お願いしなきゃ。
「あの、沖田隊長は……」
「あ……今、部屋で休んでるんです。
起こさないでいいので……あとでひとつ、伝えてもらえますか」
総司が今知ったら、きっと幕府の役人ともめごとが起こってしまう。
それは避けなきゃ。みんなのために。