「は、離してっ」
恥ずかしくなったあたしは総司の手から足を離し、自分のてぬぐいでささっと傷口を縛った。
「ああ……やっぱり」
「ん?なに?」
「お前の血、甘いな。気分が良くなる気がする」
冗談っぽく言う顔には全く危機感がなかったけど、あたしの胸にはひとつ影が落ちた。
「気分がって……やっぱり、狼化してから気分が悪いの?」
「は?いや、そんなことは……」
「正直に言って総司!体調が悪いなら、あたしの血、いくらでもあげるから!」
ぎゅっと総司の着物の胸をつかむと、彼は呆気にとられたようなマヌケな顔をした。
「大丈夫だって。なにいきなり必死になってんだよ」
「あんたが……あんたが、勝手に狼化したりするから……心配なんだよ」
「あのときは……仕方がなかっただろ」
総司の表情が曇る。
山南先生のことを思い出したから?
それとも、銀月さんの言っていたことを思い出したから?
「お願いだから……池田屋の前みたいに、隠し事はしないでね」
「わかってる。そう心配すんなって」
総司は笑うと、あたしの頭をぽんぽんとなでて、昼餉の準備に戻る。
でもあたしは、安心なんてできなかった。
総司の無理やりに作った笑顔がとても、儚く見えてしまったから。



