幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「は、離してっ」


恥ずかしくなったあたしは総司の手から足を離し、自分のてぬぐいでささっと傷口を縛った。


「ああ……やっぱり」

「ん?なに?」

「お前の血、甘いな。気分が良くなる気がする」


冗談っぽく言う顔には全く危機感がなかったけど、あたしの胸にはひとつ影が落ちた。


「気分がって……やっぱり、狼化してから気分が悪いの?」


「は?いや、そんなことは……」


「正直に言って総司!体調が悪いなら、あたしの血、いくらでもあげるから!」


ぎゅっと総司の着物の胸をつかむと、彼は呆気にとられたようなマヌケな顔をした。


「大丈夫だって。なにいきなり必死になってんだよ」


「あんたが……あんたが、勝手に狼化したりするから……心配なんだよ」


「あのときは……仕方がなかっただろ」


総司の表情が曇る。


山南先生のことを思い出したから?


それとも、銀月さんの言っていたことを思い出したから?


「お願いだから……池田屋の前みたいに、隠し事はしないでね」

「わかってる。そう心配すんなって」


総司は笑うと、あたしの頭をぽんぽんとなでて、昼餉の準備に戻る。


でもあたしは、安心なんてできなかった。


総司の無理やりに作った笑顔がとても、儚く見えてしまったから。