「狼のくせに猪の肉が食べられないの?」
「獣仲間だからな……ってオイ。
ま、正直苦手だけど、お前が作ったんなら食べるしかねえよな」
総司はそう言いながら、人数分の食器を用意し、漬物を壺から出し、器用に切りはじめた。
さすが、刃物の扱いが上手だ。
長い指の動きに、思わず見とれる。
なんか、こういうのっていいかも……普通の家では男の人が料理を手伝うなんてこと、しないだろうけど。
何もないおだやかな日常って、貴重だなあ。
「あ、つ……っ!」
余計なことを考えていたら、洗おうとしていた肉を切った包丁を、床に落としてしまった。
ひざ小僧に、すっと短く赤い線が走る。
「あーあ、なにやってんだよ」
総司はそう言うと手を止め、あたしの足元にしゃがみこむ。
そして片足を持ち上げたと思うと、玉となって溢れだした血を、ぺろりとなめた。
「ひやあ!」
転ばないように、咄嗟に水瓶に手をつく。
って言うか、いきなりなめないでよ!ビックリするじゃん!
「大丈夫、皮が少し切れただけだ」
総司はそう言うと、こちらを見上げてにっと笑った。
それだけで、頬が熱くなってしまう。



