幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「狼のくせに猪の肉が食べられないの?」


「獣仲間だからな……ってオイ。

ま、正直苦手だけど、お前が作ったんなら食べるしかねえよな」


総司はそう言いながら、人数分の食器を用意し、漬物を壺から出し、器用に切りはじめた。


さすが、刃物の扱いが上手だ。


長い指の動きに、思わず見とれる。


なんか、こういうのっていいかも……普通の家では男の人が料理を手伝うなんてこと、しないだろうけど。


何もないおだやかな日常って、貴重だなあ。


「あ、つ……っ!」


余計なことを考えていたら、洗おうとしていた肉を切った包丁を、床に落としてしまった。


ひざ小僧に、すっと短く赤い線が走る。


「あーあ、なにやってんだよ」


総司はそう言うと手を止め、あたしの足元にしゃがみこむ。


そして片足を持ち上げたと思うと、玉となって溢れだした血を、ぺろりとなめた。


「ひやあ!」


転ばないように、咄嗟に水瓶に手をつく。


って言うか、いきなりなめないでよ!ビックリするじゃん!


「大丈夫、皮が少し切れただけだ」


総司はそう言うと、こちらを見上げてにっと笑った。


それだけで、頬が熱くなってしまう。