幕末オオカミ 第二部 京都血風編



慶応元年5月下旬(現暦7月)


京の街に、また蒸し暑い夏が来た。


少し前からいつの間にか見なくなっていた浅葱色の羽織が、今日ばかりはずらりと西本願寺北集会所の前に並んでいた。


「ではこれより、三条蹴上まで、上様をお迎えに参る!」


局長が号令をかけると、隊士たちの「おう!」という返事が雷のように空を揺らす。


そして、紅に染め抜いた誠の旗を風になびかせ、ぞろぞろと門の外へと行進していった。


そう、局長以下新撰組隊士たちは、上様……徳川家14代将軍、家茂様の上洛の警護のために出動する。


みんな、少し緊張したような、興奮したような面持ちをしていた。


雲の上の存在である上様を傍で守れる名誉を、噛みしめているようだった。


「何がそんなに嬉しいのかね。
側室の一人もうまく扱えないような上様の傍に行けるのがさっ」


あたしはみんなを見送ったあと、炊事場で猪の肉と悪戦苦闘していた。


うう、生肉切るの気持ち悪い……。


「いくら血肉になるからってさあ……」


魚より肉の方が人の体の力になるのは知っていたけど、独特の獣くささが苦手な隊士も多く、普段の食事にはあまり出ないのだけど……。


山崎監察が、とにかく隊士に栄養をつけた方がいいと言うので、洛外から来た商人から買って、なんとか美味しい調理法を探しているところ。