なにが武士だよ。


恥をさらしたっていいじゃないか。


悲しければ、声を上げて泣けばいいじゃないか。


武士の誇りなんて、命の重さに比べたら、どれほどの価値があるんだよ。


喚いてしまいたかったけれど、総司に抱きしめられたら、そんな言葉は出てこなくなってしまった。


「ごめんなさい、ごめんなさい山南先生、あたしのせいで……!」


代わりに溢れるのは、後悔ばかり。


あたしが槐の正体に、もっと早く気づいていたら。


あたしが、大奥から逃げたりしなければ……!


「ばか、だなあ、楓くん……私はきみが、とても、好きだったよ……。

本当の、妹のように、思っていた……」


「先生……」


「いつも励ましてくれたね……

そして、さっきの言葉が聞けて……ひどい誤解をしていたことに、気づくことができた……。

ありがとう……」


山南先生はそう言うと、自力でなんとか体を起こし、膝をつく。


嬉しいって……副長が本当は、山南先生を大事に思っていたってことが?


なによそれ。


そんな、当然のこと……あたしがお礼を言われることじゃない。


「さあ……もう、時間がない」


そうこうしている間に、山南先生の傷口からは、とめどなく血が溢れだしていた。