「……土方くん、頼みがある……」
「なんだ、山南さん」
小さくなっていく声に、土方副長が耳をすませる。
「私は弱虫だ。もう、人間としては……生きていけないだろう。
理性のないもののけとして、人を傷つけたくはない……」
完全にもののけと同化できたのは、心身共に健康な者だけ。
そんな槐の声が聞こえていたんだろうか。
「山南さん、もうやめてよ。
ここはあの狼に任せて、俺らは早く山南さんを運ぼう!」
平助くんが涙目で言うけど、山南先生は首をかすかに横にふった。
「近藤さんに、迷惑をかける前に……狂ったもののけになる前に、人間として……武士として、腹を切らせてくれないか」
「なっ、山南先生……!」
切腹だなんてそんな。
もののけとの同化が不完全とはいえ、せっかく、助かるかもしれない命を……。
「もう……いいんだよ。もうじゅうぶんだ。
みんなと一緒に京に上ってきて……たくさん、幸せな夢を見せてもらったよ。
できれば……もっとずっと、同じ夢を見ていたかったけれど……」
山南先生は、強い瞳で土方副長を見つめた。



