幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「……土方くん、頼みがある……」

「なんだ、山南さん」


小さくなっていく声に、土方副長が耳をすませる。


「私は弱虫だ。もう、人間としては……生きていけないだろう。

理性のないもののけとして、人を傷つけたくはない……」


完全にもののけと同化できたのは、心身共に健康な者だけ。


そんな槐の声が聞こえていたんだろうか。


「山南さん、もうやめてよ。

ここはあの狼に任せて、俺らは早く山南さんを運ぼう!」


平助くんが涙目で言うけど、山南先生は首をかすかに横にふった。


「近藤さんに、迷惑をかける前に……狂ったもののけになる前に、人間として……武士として、腹を切らせてくれないか」


「なっ、山南先生……!」


切腹だなんてそんな。


もののけとの同化が不完全とはいえ、せっかく、助かるかもしれない命を……。


「もう……いいんだよ。もうじゅうぶんだ。

みんなと一緒に京に上ってきて……たくさん、幸せな夢を見せてもらったよ。

できれば……もっとずっと、同じ夢を見ていたかったけれど……」


山南先生は、強い瞳で土方副長を見つめた。