『待たれよ、海の者ども!』
あたしたちと半魚人たちの間に、突然灰色の塊が躍り出た。
蜃気楼のようなそれは、だんだんと実体を持ち……やがて、二股のしっぽを持つ、青い目の大きな狼の姿に変わった。
「あれは、六角獄で見た……!」
「ああ、あのときの狼だ」
総司に確認すると、彼は厳しい顔でうなずく。
禁門の変の日、彼は人間の姿で槐と戦っていた。
その後、あの狼の姿になり、どこかへ消えていったんだった。
どうしてあいつがここへ?
『海の者ども、ここは退け。
南へ戻るまでに、夜が明けてしまうぞ』
狼は半魚人に語りかけているようだった。
『岡崎の忍よ、この場は去るがいい。
そう遠くない将来、お前たちと新撰組が決着をつけるときは必ずやってこよう』
「く……っ」
槐が唇を噛む。
最初に見た時から、彼らは敵同士だったみたいだけど、いったいどんな成り行きでそうなったんだろう。



