「山南さん!」


副長が叫ぶ。

総司はうずくまる山南先生の後ろに立ち、腕を振り上げた。


「総司、ひじっ!爪はナシ!」


あたしの声にぴくりと耳を動かした総司は、一度躊躇したあと……肘を直角に曲げ、それを山南先生の背中に向かっ
て振り下ろした。


ドンっと鈍い音がして、山南先生が倒れる。


どうやら、気絶したみたい。


「いい子!こっちにおいで!」


両手を広げると、あたしよりはるかに大きな人狼は、まるで犬のようにあたしに向かって走ってきた。


「わふんっ」


そして、お約束のようにあたしを押し倒そうとする。


その後頭部を、土方副長が自分の刀の鞘で殴った。


「種付けしてる場合じゃねえよ!」


「ううううう、ぐるるるる……」


総司は涙目で、土方副長に牙をむく。


「総司、それあんたの大好きな副長だよ!
ほら、元に戻って!」


あたしはいちかばちか、懐から霊符を取り出し、総司のおでこにくっつけた。


すると総司は、あっさりと人間の体に戻った。


耳やしっぽが次々に消えていき、目がいつもの色を取り戻す。