「楓、すまねえ。

真言が使えない今、あいつを止められるのはお前しかいねえんだ。

頼んだぜ」


「……はいっ!」


きっと総司は、副長が傷つけられたのを見て、我慢できなくなってしまったんだ。


こうなってしまったらもう、あたしが総司を制御するしかない。


「ぐわうっ!」


山南先生を敵とみなした総司は、金色に変わった瞳で彼をにらみつけ、俊足で懐に入り込もうとする。


しかしその爪に引き裂かれる前に、山南先生は背後に飛び、くるりと空中で回転する。


その着地を待たず、総司も高く跳び、再び爪を振り上げるけど……。


──ヒュンッ!


ヒレの鎌が振り下ろされた。


さすがの総司も空中を移動することはできず、咄嗟に刀を鞘ごと腰から抜き、それを受け止めた。


そのまま押されるように、地上へ着地する二人。


「鞘を使うなんて……」


もしかして、理性が残っているの?


そうは思うけれど、総司は刀を抜くことはしない。


鞘のまま、盾として使うことを選んだのか、それとも……。


「……殺しちゃなんねえってことを、わかってるのか?」


副長があたしの思考を継ぐようにつぶやいた。