「土方さん!」


総司の声で、ハッとした。


ギイン、と鋼どうしがぶつかいりあうような音がしたかと思ったら、副長が後ろへと体勢を崩していた。


あの副長が、押し負けた……!


副長はすぐに態勢を立て直そうとする。


しかしそのすきを、山南先生が逃すはずはなかった。


──ビュオオッ!


風を切るような音がして、ヒレの鎌が副長の顔に真っ直ぐに突き出される。


「ぐ……っ!」


「副長!」


副長の役者のような顔が切り刻まれることはなかった。


しかし、彼は攻撃を完全には避けきれず……その左の肩口を斬られ、風に流された黒髪を数本散らされた。


「副長!副長……っ!」


「騒ぐんじゃねえ小娘!こんなの、どうともねえんだよ!」


そう言いながら副長は、次々に襲う山南先生の刃を刀で受け止めていた。


そのたびに、苦しそうな顔をする副長。


どうしよう。加勢したいけど、相手が山南先生じゃ、どうしたらいいのか……。


唇を噛んでいると、苦無をにぎりしめたまま立ち尽くすあたしの横で、ふわりと風が動いたような気がした。