陽炎との戦闘のときは、たしかにあたしの声が届いたようだった。


でも、池田屋のときは……あたしがなにをしても、総司は理性を取り戻さなかった。


あの一件以降、狼化していない彼がどういう状態になるのか……誰にもわからない。


「……ふざけんじゃねえ。

どうしてどいつもこいつも、死に急ぐような真似ばかりしやがる」


副長も同じことを思ったのか、眉をひそめて吐き捨てる。


「でも、早く山南さんを止めないと……腹の傷が心配です」


「えっ」


「たしかに。

あの傷はふさがっていないようだな」


斉藤先生の言葉に、平助くんが眉を下げる。


「嘘だろ、なんでだよ!

腕は治ったのに、なんで腹の傷は治らないわけ?」


「多分だが、同じ種類のもののけにつけられた傷だからだろう」


冷静に思えるけど、斉藤先生の声にも次第に焦りが混じり始める。


早くしないと、山南先生の命が危ない……。


ぎり、と副長が奥歯を噛む音が聞こえた。


その時。