「な……っ」
副長は驚きに目を見開き、慌てて刀の峰でヒレを受け止める。
そのまま、二人はにらみあったままぎりぎりと押し合った。
「何故だ?芹沢も新見も、もののけの姿になっても理性を失わなかった。
浪士たちだって、普段は普通の人間として生活していたはずだ。
なのにどうして山南さんは、すぐに理性を失ってしまったんだ?」
総司が槐に詰問するように、刀の切っ先を向ける。
「私にも詳しいことはわからないわ。
実験をしているのは、岡崎一族ではなく、長州だもの」
「なんだと……」
「ただひとつ言えるのは、これまでの実験の結果、もののけと安全に同化できたのは、心身共に健康な者だったということよ」
そんな……じゃあ、体も心も傷ついて弱っていた山南先生は……?
槐が言い終わると、背後から別のもののけが忍び寄る。
総司は振り向きざまに、それを袈裟懸けに斬った。
「山南先生……もうやめて!
仲間同士で傷つけあうなんて……!」
たまらずに叫ぶと、山南先生はぎろりとこちらをにらみ、押し合っていた土方副長から離れた。
そして、あたしと目が合うと、砂利を蹴散らし、空に舞い上がった。



