「くっ」
急いで体勢を立て直し、苦無を投げつける。
すると槐は空中で身を翻し、それを避けて着地した。
今度は帯の間から棒手裏剣を取り出し、かまえたまま槐はつぶやく。
あたしは片手の不自由な山南先生を守るように、両腕を広げて前に立った。
「どうしてあんたはそうなのよ……いつもいつも、お人よしすぎるのよ」
顔を上げた槐が見ていたのはあたしではなく、山南先生だった。
「やめてよ。調子が狂うのよ。
非情になりたいの。
優しい気持ちを、思い出させないで」
「槐……仕方がないよ。
そう思うのは、きみが本当は、優しい子だということだ」
「違う!私は、あんたなんか簡単に殺せるんだから!」
槐が棒手裏剣を振りかざす。
そのがら空きになった体に、拳をめり込ませようと思った瞬間……。
「山南さん、後ろだ!!」
副長の叫び声が、背後から聞こえた。
けれど、そちらを見ている余裕はない。
しかし、攻撃を加えてくるはずの槐の動きが、急に遅くなった。
その体はこちらまで届くことなく、立ち止まる。



