全力で駆けて九条河原についたときには、もう夜になっていた。


夏のせいか、やけに近くに感じる星たちが、あたしの行く道を照らす。


新撰組の陣営の前には松明を持った隊士がいた。


「局長!土方副長!」

「楓くん!」

「小娘?」


突然現れたあたしに、二人とも目を丸くした。


山南先生に書いてもらった書状を渡すと、副長はそれに早速目を通しだす。


「あの、総司は?」


局長に聞くと、その辺にいないのなら順番で川で水浴びをしているかもしれないと教えてくれた。


土方副長に呼び止められる前、あたしは陣営を飛び出し、河原へと走る。


目をこらすと、川辺で髪を結い直し、着物を整えている大男の姿が見えた。


間違いない、総司だ。


「総司!」


名前を呼ばれた総司は驚いた顔で、こちらを振り返る。


「楓……!?」

「久しぶり、総司!」


あたしは砂利を蹴って思い切り総司の首に抱きついた。


用意ができていなかったのか、総司はよろけて咳き込む。


慌てて離れると、総司は裏返った声であたしに聞いた。