「治す方法はある。

厳密に言えば、薬を使うんじゃないんだけどね。

このひとを脱退させようとしたのは……」


槐はちらりと山南先生を見た。


けれど、彼女を見つめていた山南先生と目があうと、すぐに視線をそらす。


「それが、新撰組にとって痛手になると思ったからだ。

そして、楓を可愛がっている人物を、ひとりずつ切り離してやろうと思った。

こいつが、あたしから陽炎様を奪ったように、あたしだって楓の大切なものを奪ってやろうと思った」


「だから、小娘の仲間を……偶然知り合った山南さんを標的にしたのか?

山南さんから話を聞けば、こいつの一番大事なものは総司だってすぐにわかったはずだろう?

総司を奪おうと思うのが普通じゃないか?」


副長の追及に、槐は舌打ちをした。


「聞いたよ。だから……楽しみは最後にとっておこうと思ったんだ」


「次々にみんなを標的にして、最後に総司を狙おうとしていたの?」


たまらずに声を出すと、槐はふっと笑みをこぼした。


そして、まだ自由な左手を背中に回す。


次の瞬間、左手にはもう一本の苦無がにぎられており、槐はそれを山南先生をめがけて振り上げた。


山南先生はその切っ先を避けるため、彼女の右腕を離してしまう。


足元の砂利を蹴り、背後に高く飛びのいた槐に向かい、副長が刀を抜いた。