槐の手には、小さな苦無がにぎられている。
喉に突き立てられたら、命が危なかったかもしれない。
「離せ!」
「離さないよ」
「く……っ、小次郎!」
槐が呼ぶと、小次郎が山南先生に向かって手裏剣を投げた。
しかし……。
──キイン!
高い音がして、手裏剣が弾き飛ばされた。
山南先生の前に出たのは、刀を抜いた総司だった。
総司が、小次郎の手裏剣を刀で落としたんだ。
「槐、といったか。
陽炎が死んだのは、楓のせいじゃねえ。
あいつを殺ったのは……俺だ」
小次郎を剣の切っ先で威嚇しつつ、総司は腕を取られたままの槐に説明する。
「一番隊隊長、沖田総司……あんたが陽炎様を?」
憎しみに満ちた目で、槐が総司をにらむ。
「土方さんは……陽炎を助けようとした。
楓の居所をばらさなければ、逃がしてやっても良いと。
けれど陽炎は己の誇りをかけ、俺と戦うことを選んだ」
槐は黙って、総司の言葉に耳を傾けていた。
けれど……。



