幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「……岡崎一族は、陽炎様があんたを連れて帰れなかったことで……幕府に手を切られたんだ」


「それって……」


「幕府からの仕事が、いっさい来なくなったってこと」


そんな。


家康様の時代から岡崎一族に仕事を依頼していた幕府が、手を切ったなんて……。


「そんなことになったら、忍たちの仕事がなくなっちゃう。

みんな生活していけなくなっちゃうじゃない……」


「そうよ……大奥から逃げたあんたのせいでね!」


槐の低い怒鳴り声が、胸に容赦なく突き刺さった。


あたしのせいで、陽炎だけじゃなく、岡崎の忍たちまで不幸にするなんて……。


呆然と立ち尽くすあたしに、槐がつかつかと歩み寄ってくる。


あたしの前にいる山南先生には目もくれず、目の前までやってきた彼女は……その細い右腕を振り上げた。


──殴られる。


そう思っても体は動かず、ぎゅっと目をつむる。


けれど、予期した痛みはなかなか襲ってこなかった。


その代りに、ぱしっと音がして、目を開く。


「や、山南先生……」


「明里……いや、槐。やめなさい」


山南先生は左手で槐の腕をつかんでいた。