「陽炎様が、あたしに文を寄越したんだ」
槐はその文の内容を暗唱する。
『楓の居場所を見つけた。やっかいな場所だ。
俺は、楓の今の仲間に返り討ちにされるだろう。
いつまでも俺が帰ってこないようだったら……岡崎の村に幕府の圧力がかかるようだったら、楓の居場所を伝えろ』
そこで言葉を切った槐は、ふうと息を吐き、ゆっくりと吸って言った。
「──そこは、会津藩御預・新撰組」
目を閉じていた槐が、まぶたを開ける。
彼女の目には、うっすらと涙がにじんでいた。
「陽炎が……」
陽炎は最初から、新撰組と戦って命を落とすことを予期していたんだ。
任務に失敗した岡崎一族に、幕府が制裁を加えるようなら……と、あたしの居場所をこの子に伝えたんだ。
「安心しなよ。幕府は岡崎を攻撃しようとはしていない。
あんたの居場所も知らないままだ」
その言葉に、ほっとしている暇はなかった。
槐はその理由を、淡々と話した。



