「もうムリィィィィ!」


「楓、落ち着いて~!

お願いだから、あの人たちと同じような行動しないでよ!」


あの人たち、とは先に出動した局長や副長のことだ。


彼らはなかなか出動命令を出してくれない一橋公の宿所に乗り込んで直談判しようとしたらしい。


そんな彼らの暴動は、会津候のとりなしで、ことなきを得たらしいけど……。


「暴動起こすみんなの気持ちがわかるよ。

長州軍が目の前まで迫ってるのに、おとなしく留守番してるなんて無理!

あたし、今から九条河原に行く!」


「ダメだって!局長命令に背いたら、切腹だよ!」


「だけど……!」


地団太を踏むあたしに、山南先生がふうとため息をついて言った。


「……仕方ないな。

楓くん、私から至急土方くんに届けてほしい書状があるから、それを届けておくれ。

そのついでに、野営に参加してくればいいよ」


「山南先生……!」


「山南さん、書状って、いったい何の書状なのさ」


「それはこれから考えるよ」


山南先生は苦笑して、硯箱と紙を用意する。


それって、なんとか用事を作ってあたしを出動させてくれるってことだよね。