幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「とにかく、明里さんを追いましょう。

もしかしたら客の男が、討幕派かもしれない」


こうしていても、事態は悪くなる一方だ。


このまま明里さんに逃げられる可能性もある。


そうしたら、山南先生の腕を治す薬の手がかりが、途絶えてしまう。


「そうだね。
もし先に土方くんに明里を見つけられてしまったら厄介だ」


「山南先生……」


さっきからわかりやすく、副長を敵視している山南先生。


今までは、そんなことなかったのに……。


ざわざわと胸が鳴る。


「けれど、覚えておいてくれ、楓くん、総司。

私は明里を何とかして救いたいと思っている」


宙をにらんでいた山南先生の顔が、いつもの優しい表情に戻る。


「彼女は、失意の底にいた私を癒してくれた。

彼女の笑顔を見るだけで、寂しかった心が満たされたんだ。

……たとえそれが、すべて演技だったとしても」


寂しかった。


そんな言葉が、山南先生の口から出るとは思わなかった。


それが、彼の素直な気持ちだったんだ……。