「とにかく、明里さんを追いましょう。
もしかしたら客の男が、討幕派かもしれない」
こうしていても、事態は悪くなる一方だ。
このまま明里さんに逃げられる可能性もある。
そうしたら、山南先生の腕を治す薬の手がかりが、途絶えてしまう。
「そうだね。
もし先に土方くんに明里を見つけられてしまったら厄介だ」
「山南先生……」
さっきからわかりやすく、副長を敵視している山南先生。
今までは、そんなことなかったのに……。
ざわざわと胸が鳴る。
「けれど、覚えておいてくれ、楓くん、総司。
私は明里を何とかして救いたいと思っている」
宙をにらんでいた山南先生の顔が、いつもの優しい表情に戻る。
「彼女は、失意の底にいた私を癒してくれた。
彼女の笑顔を見るだけで、寂しかった心が満たされたんだ。
……たとえそれが、すべて演技だったとしても」
寂しかった。
そんな言葉が、山南先生の口から出るとは思わなかった。
それが、彼の素直な気持ちだったんだ……。



