キッとにらむと、彼は「すまん、あれは俺も悪かった」と謝った。
良く見ると、頬が少し腫れているようだ。
きっと、昼間の事を副長に報告して、殴られたんだろう。
「そういうわけだ。
山南さんの腕を治すのも、明里と縁を切らせるのも、早い方がいい」
副長が吐き捨てるように言う。
「でも……腕はともかく、明里さんと縁を切らせるというのは……」
山南先生は、本当に明里さんが好きみたいなのに。
「山南さんが彼女に本当に惚れているというのは、総司から聞いたよ。
どうしてそんな怪しい人物に……というのが、正直な感想だが」
局長が難しい顔をした。
「恋ってのは、理屈じゃねえんだろうよ」
副長は真剣な顔で、あまりにも似合わないことを言う。
けれど、笑っている余裕はなかった。
「だから、これ以上山南さんがのめり込んで辛い思いをする前に……明里から、引き離す」
「そんな……」
詮議は仕方ないかもしれないけど、明里さんが討幕派と繋がっていた場合、キレイに手を切ってくれたら、引き離したりまではしなくてもいいんじゃ……。
反論しようとしたところで、ふと人の気配を部屋の外に感じた。
反射的にその場から立ち上がり、ふすまを開ける。
すると誰かが離れの方へ、廊下を音もなく駆けていくのが見えた。



