「紅葉ちゃん。あんた、お客さんにご挨拶もできんの?」
昨日の冷たい声とは少し違う、姉女郎として新入りを叱るような声音で、明里さんが言う。
「へ、へえ……いらっしゃいませ。たんと遊んでっとくれやす」
あたしは顔を見せないまま、声音を変えて答えた。
「あんたなあ。こっち見たらどうや」
「い、いいよ明里。
私は彼女じゃなくて、キミの馴染み客なんだから」
少し強い口調になった明里さんを、山南先生がなだめている声がした。
早く部屋に戻ろうと思ったそのとき。
「新撰組の沖田はんえ!」
「また紅葉ちゃんをご指名らしいで!」
そんな声が聞こえてきた。
げっ……総司、なんでこんな時に!
階段を上がってきた足音が、ぴたりと止まった。
「や、山南さん……」
「そ、総司。お前とこんなところで出会うなんて、珍しいね。
誰にも見つからないように、そっと出てきたのに……」
どうやら総司は、人目を忍んで来たらしい山南先生に、ばったり出くわしてしまったらしい。
なんてマヌケなの……!



