幕末オオカミ 第二部 京都血風編



「紅葉ちゃん。あんた、お客さんにご挨拶もできんの?」


昨日の冷たい声とは少し違う、姉女郎として新入りを叱るような声音で、明里さんが言う。


「へ、へえ……いらっしゃいませ。たんと遊んでっとくれやす」


あたしは顔を見せないまま、声音を変えて答えた。


「あんたなあ。こっち見たらどうや」


「い、いいよ明里。

私は彼女じゃなくて、キミの馴染み客なんだから」


少し強い口調になった明里さんを、山南先生がなだめている声がした。


早く部屋に戻ろうと思ったそのとき。


「新撰組の沖田はんえ!」


「また紅葉ちゃんをご指名らしいで!」


そんな声が聞こえてきた。


げっ……総司、なんでこんな時に!


階段を上がってきた足音が、ぴたりと止まった。


「や、山南さん……」


「そ、総司。お前とこんなところで出会うなんて、珍しいね。

誰にも見つからないように、そっと出てきたのに……」


どうやら総司は、人目を忍んで来たらしい山南先生に、ばったり出くわしてしまったらしい。


なんてマヌケなの……!