「うち、尾張の産まれなんです。姉さんは、どこどすか?」


負けずに質問するけど、明里さんは振り向きもしない。


「あの、キレイにお化粧してはりますなあ。

どうしたらそんなにキレイにできるんやろ。

なあ、明里姉さん、教えてくれんやろか」


今度はおだててみる。


すると明里さんは、ぴたっと足を止めた。


そして、ゆっくりと振り向く。


「……あんた、この明里の顔に見覚えはないかえ?」

「えっ?」


見覚え……?

やっぱり、前にどこかで会っている?


「ど、どこかでお会いしました?」


素直に聞いてみるけど、明里さんは冷笑を浮かべ、黙って去っていってしまった。


「えっ、ええ、ちょっと……」


彼女の姿が見えなくなったところで、頭を押さえる。


いったいいつどこで会ったんだろう?


大奥……なわけはないから、岡崎の村?


それとも京に来てから?


「こわっ……」


岡崎のくノ一だったら、あたしの素顔や素性を知っているはず。


それは、新撰組の脅威になる。