楓から聞いたことを報告し終えると、土方さんは眉根を寄せた。


「……くさいのは明里だけじゃねえな」


そうこぼすと、腕組みしたまま深いため息をついた。


「どういうことですか?」


「その明里を山南さんに紹介したのは誰だ?」


「それは……」


明里は伊東参謀が主催した宴に呼ばれたのだった。


ということは、伊東参謀と明里が繋がっているということか?


「俺の考えすぎならいいけどな」


「土方さん……」


「悪いな、総司。休息所の件も楓の養子の件も、先延ばしになっちまって」


そういう土方さんの文机の横には、どっさりと紙の山が積まれていた。


「いえ……ムリしないでください」


土方さんは近藤先生のために、楓を正妻にするのはあきらめろと言っていたのに。


結局、俺たちのことを考えてくれていたんだ。


会話が途切れた瞬間、ふすまの向こうから声がかけられた。


「副長、斉藤です」

「おう、入れ」


ふすまを開けたのは斉藤だった。