「簡単じゃないんだよ。

基本、脱退しようとした者は切腹になってしまう。

うちの副長は厳しくてね」


困ったように笑う山南先生。


「それに……彼らが私を必要としていなくても、私は彼らがまだ好きなんだよ。

近藤さんも、土方くんも、沖田くんも……」


そう言う声は、少し震えているようだった。


こっちまで切なくなって、胸が痛い。


でもどうして、明里さんはそんな無茶な条件をつけるんだろう?


さっきまで優し気だった瞳は、山南先生をにらむように見つめている。


「けど、薬屋は幕府側の人間にはその薬を売ってくれへんよ?

しかも今は大津にいるし。

うちはそんな遠くまで行かれへんし、山南先生が直接行かな、売らんて言うてるんやから」


そんな……。


組では私用での外泊は禁止だから、大津まで行くのはちょっと無理だろう。


もし行けたとしても、その薬屋が山南先生の顔や情報を知っていたら、薬を売ってもらえない。


新撰組を脱退して行かなければ……。