幕末オオカミ 第二部 京都血風編



局長以下、新撰組隊士たちが九条河原へ出陣して、七日目……。


「はああああ……」


「盛大なため息だなあ……そんなに総司が恋しいのかい?」


ハッとして顔を上げると、山南先生が苦笑してこちらを見つめていた。


そうだ、せっかく山南先生が句作を教えてくれると言って、基本を習っていた途中だったのに……。


「そ、そうじゃありません!

何も浮かばない自分に、がっかりして……」


今後どんなところへ潜入するかわからないから、色々なことを覚えた方がいいと山崎監察に言われ、とりあえず句作から初めてみたものの、あたしには才能がないらしい。


「無理することはないよ」


あたしと同じく屯所の守りを固める役目……という名の留守番役、山南先生。


彼は池田屋事変の直前に体調を崩し、今もそれを引きずっていた。


眠れない日が続いたり、お腹が痛かったりするみたい。


他にも池田屋での怪我が治りきっていない者、病人、そして数名の隊士が屯所に残っていた。


「それにしても、暑いな」

「あたし、お茶をいれてきます」

「ああ……ありがとう」


山南先生はいつもの人の好さそうな顔で笑ったあと、ぼんやりと宙を見つめていた。


きっと、池田屋にも今回の戦にも参加できなかったことが、残念なんだろう。