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「おいアカネ」


ざざ…ん、と。

途切れ途切れの波の音に混じって、そんな声が聞こえた。




「…………鸞?」




体育座りに埋めた顔をあげると、月明かりに照らされた鸞がかなり目の前にいた。

目と鼻の距離。


「うぉっ」

「くっく、お主よほど弱っているの。足音にも気づかんとは」


楽しそうに笑う彼女に目がチカチカする。


…さっき、喧嘩したんだよ…な?

ああああ!こいつはいっつもそうだ!

私の気持ちをちぐはぐにしちまう。


…喧嘩して、隠そうと思ってた気持ちをつい出してしまった。

それが気まずくて、こうして異界の狭間の海に来たってゆーのに。


このKYが。


「お主、今失礼なことを考えとるの?」

「気のせいだババア」

隣に当たり前のようにポスンと座る。

居座るつもりかよコイツ。

「ぴちぴちのOLに向かって…!お主体もないだろーが」

「うっせーな、悪ぃか」

「悪い」


ふんっ、と顔を背けて。



「お主を殴れんからな」



触れない私をみたくないかのように。