妄想世界に屁理屈を。



ピンポーン、と。


スズがベルを鳴らした。


「すみませーん。黒庵さまはいらっしゃいますかー」




『どちらさまでしょう』




――え?


女の、声?


「あ、の…え、うそ」


スズも驚いたらしく、固まってる。


かちゃん、と緑色のドアがあいた。


「…どちらさまですか?」


キャミソール姿の、デリヘル嬢みたいな女が顔を出した。

若い女だけど、見た目は地味。

化粧っけのない顔に、眼鏡と黒髪。

ゆーちゃんの方がかわいい。


「ああ、あなた…あの、ストーカーさん」


す、と目が細められる。

視線はミサキくんにいっていた。


「うちの“だあくん”に近寄らないでくれますか?あなたにあうたびに頭痛を訴えてるんですから」

「――しかし、吾は」

「もういい加減にしてください。主とかご主人とか、意味わかりません」



面識があったのか。

ミサキくんが叱られた犬みたいに絶望的な目をしていた。